【追悼文】
恩師鈴木周一先生を偲んで
軽部征夫
東京工科大副学長、産総研・バイオニクス研究センターセンター長
東京工業大学 元資源化学研究所所長、元埼玉工業大学学長であった鈴木周一先生が、平成17年11月15日に逝去されました。ここに鈴木先生のご冥福をお祈りするとともに、酵素工学における先生のご業績を紹介したいと思います。
鈴木先生は、九州大学の理学部化学科を昭和23年にご卒業になり、その後東京工業大学の研究生、昭和31年から東京工業大学助手になられ、資源化学研究所にお勤めになられました。先生は、昭和36年に同研究所生物資源部門の助教授に昇進され、水口純教授の許で生物電気化学と酵素の研究を進められました。私が研究室に入った頃は、酵素の化学修飾の研究を一貫して行っておられました。例えば、酵素を化学修飾することによって安定性が変わったり、あるいは、活性が変化する現象を詳細に研究しておられました。
私が鈴木先生のご指導を直接受けるようになったのは、水口先生が逝去された後で、先生の許で博士論文をまとめることになりました。当時の私の研究は、繊維性タンパク質のコラーゲンを電気化学的に膜に成形する研究でした。これは、ソーセージのケーシングを作る目的で行われていた研究であり、コラーゲンが陰極上に膜を形成する機構を解明することが私の博士論文の目的でした。既に田辺製薬の千畑、土佐博士らによって、固定化酵素の研究とその応用が進められていることを知った私は、コラーゲン膜の中に電気化学的に酵素を固定するアイディアを出しました。実際にα-アミラーゼをコラーゲン膜の中に固定して、澱粉の加水分解が出来ることを証明しました。このことを鈴木先生に話しましたところ、大変ユニークな研究だから是非進めるべきだという強い支持を得ることができました。そして、鈴木先生は大阪で開かれた国際発酵工学会議でこの研究を発表しました。さらに、現東京工業大学学長の相澤益男氏が、この酵素膜を酵素電極に応用できるのではないかというアイディアを出しました。これがきっかけとなって鈴木先生の指導の下でバイオセンサーの開発研究が始まり、世界的に有名になりました。
鈴木先生は、常に研究のオリジナリティーが大切だと我々に話してくれました。鈴木先生、水口先生の師匠に当たる加藤与五郎先生は、まさに「独創」が最も重要であると言われて水口先生、鈴木先生を指導されたと聞いております。その指導が鈴木先生にも強い影響を与えたものと思われます。
鈴木先生は、酵素工学に関する業績により、昭和55 年4 月には、日本化学会賞を受賞され、その年同じく市村学術賞を受賞されました。また、平成3年には電気化学会功績賞、加藤記念賞、そして平成4年には、化学センサ国際賞を受賞されました。また、昭和56年にパルムアカデミックシュヴァリエ勲章をフランス政府から授与され、同年10月には東京都発明研究功労者を受賞、昭和62年4月には紫綬褒章を授与されました。そして、平成8年4月には勲三等旭日中勲章を授与されました。これらは、酵素工学における鈴木先生の功績が顕著であったためと考えられます。研究業績だけではなく、鈴木先生は多くの研究者を育てられました。これらの研究者たちは日本だけではなく、広く海外でも活躍しております。