【会員企業におけるSDGsの取り組み】

三井化学の環境・QOL 向上への貢献とSDGs

三井化学梶@阿部玲子

 

1.はじめに
三井化学グループは、「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する」を企業グループ理念とし、自動車、医療、食品、家電、住宅、エネルギーなど、人々のくらしに役立つ様々な素材を提供する総合化学メーカーです。

化学産業は事業活動を通じて社会課題解決に貢献することができます。また同時に、環境・社会に与える影響にも十分な配慮が必要です。この考え方の下、2006年より当社グループは「3軸経営」を志向し、経済・環境・社会の3軸のバランスがとれた経営を進めてきました。国連がSDGsを打ち出した翌年の2016年には、目指すべき未来社会「環境と調和した共生社会」「健康・安心な長寿社会」「地域と調和した産業基盤」の実現に向けた「2025長期経営計画 (2025長計) 」を策定しました。2025長計の達成は、SDGsの達成、ひいては持続可能な社会の実現に貢献するものと考えています。

2025長計の進捗を計るKPI (Key Performance Indicator) の1つとしたBlue Value®/Rose Value®拡大の取り組みを通じて、当社グループのSDGsへの貢献を紹介します。

2.Blue Value®/Rose Value®とは
 当社グループが提供する製品やサービスは、直接消費者に届くものは少なく、環境や社会にどのような価値を提供しどの程度貢献を拡大できたか、その進捗を示すことも難しいのが実情でした。そこで、当社グループでは、独自指標を用いて製品・サービスを用途別に評価し、貢献価値が高いものを認定する制度、環境貢献価値「Blue Value®」、QOL ( Quality of Life:生活の質) 向上貢献価値「Rose Value®」を設けました。事業活動を通じた社会課題解決を見える化し、その価値をステークホルダーと共有すること、目標を定めて拡大を推進することがその目的です。2025長計目標において、2025年度に売上高比率各30%以上に拡大するとのKPIを設定し、進捗を開示しています1)

Blue Value®は、「環境と調和した共生社会」の実現に向け、LCA (Life-cycle assessment) をベースに「CO2を減らす」「資源を守る」「自然と共生する」の3要素で貢献度を判定します。化学製品の多くは、原料から製造、加工を経て最終製品となり、使用して廃棄されるまで様々なライフステージを経るため、全体を通しての環境負荷が低減できているかを評価しています (図1,2)。

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図2 製品・サービスのライフステージ

Rose Value®は、「健康・安心な長寿社会」の実現に向けて、SDGsターゲット等の社会課題やニーズを踏まえ、「少子高齢化」「健康寿命延長」「食料問題」の3つの要素でQOL向上価値を判定します。ユニバーサルデザインやグローバルヘルス、フードセキュリティ等の視点で判定基準を設定しており、当社が提供する製品・サービスの機能やコンセプトが、QOL向上に貢献できているかを精査しています (図3)。

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図3 QOL向上貢献価値「Rose Value®

2-1 Blue Value®製品による貢献例
自然やエコに関連するGreenよりもっと大きな「地球の青」を意味するBlue Value®。例えば、自動車の軽量化・燃費向上は、運転者にとってはガソリン代の節約が享受できる価値の1つですが、地球全体でみると排出される「CO2を減らす」ことに繋がり、気候変動対応策として貢献する価値と言えます。燃料タンク用接着性樹脂アドマー®は、金属タンクの樹脂化に貢献し10〜30%程度の軽量化を実現、ルーカント®は自動車用ギア油の添加剤として燃費向上に貢献しています。自動車は、走行時に発生する有害ガスの低減ニーズも高く、アドブルー® (ドイツ自動車工業会登録商標) は、NOx排出量を削減し「自然と共生する」という観点でBlue Value®認定しています。

酵素触媒も「CO2を減らす」ことに繋がっています。化学品製造は高温反応が一般的ですが、酵素触媒による反応では低温化が図れるためです。当社グループでは高分子凝集剤、紙力増強剤等に使用されるアクリルアミドを酵素触媒法にて製造しており、製造法を世界にライセンス提供しています。

2-2 Rose Value®製品による貢献例
あらゆる人が幸福や希望に満ちた「ばら色の人生」をおくれるように、という思いを込めたRose Value®。紙おむつ用不織布は、もれない・むれない・かぶれないという基本ニーズに、やわらかさやフィット感など、使用する子供や高齢者がより快適に過ごせるような価値をプラスし、「少子高齢化」に貢献しています。また、世界的な人口増や異常気象により「食料問題」も深刻化しています。野菜や果物などのしおれや変色を押さえる鮮度保持フィルムのスパッシュ®は食品ロスの削減に、殺虫剤は農作物の安定生産、食料増産に貢献します。マラリアなど感染症を媒介する蚊に有効なベクトロン®等の殺虫剤は「健康寿命の延長」の観点でも貢献する製品です。安心・安全な水へのアクセスも健康に関連する社会課題です。天然パルプに似た繊維状材料SWP®は、浄水フィルターに重金属等の有害物質を除去する機能材を均一に固定化する役割を担っています。

3.将来を見据えた次世代事業の創出
気候変動とプラスチック問題は、当社グループにとって真摯に取り組むべき重要な社会課題です。その戦略の1つとして目指すのは、世界初となるバイオポリプロピレン製造の実用化です (図4)。非可食植物から糖蜜を取り出し発酵技術を用いてイソプロパノール (IPA) とし、脱水、重合してポリプロピレンとします。原料残渣も有効活用することで、トータルで1/4〜1/5程度にまで「CO2を減らす」ことができると考えています。2024年の実用化を目指し、環境省の委託事業として実証事業を行っています。

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図4 バイオポリプロピレン実用化スキーム

感染症への対処も世界的な社会課題です。敗血症は世界で年間2000〜3000万人が発症し、1000万人が亡くなると言われています。救命率向上には、敗血症の原因となる細菌 (起因菌) を一刻も早く同定することが必要です。当社グループは富山大学と共同で世界初の「細菌迅速検査システム」を開発しました (図5)。起因菌の同定が2〜3日から約5時間に短縮可能となります。現在、医療機関での実証試験を進めており「健康寿命の延長」に貢献していきます。

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4.おわりに
持続可能な社会の実現には、企業自身が成長しながら社会価値を継続的に創造していくことが不可欠です。SDGsは、企業にとって課題解決に貢献すべきゴールであると同時に、企業の持続可能性に対するリスクを浮き彫りにし、潜在マーケットを発見する機会でもあります。当社グループは、Blue Value®/Rose Value®を社会への貢献と自社の経済成長、すなわち社会価値向上と企業価値向上の両立を測るための指標とし、両価値の最大化を図りながら、社会および当社グループの持続可能な発展を目指していきます。

文献
1) 三井化学グループESGレポート https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/index.htm

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